Wednesday, October 2, 2024

鳴き砂海岸の環境保護 - 2020年代現状

鳴き砂海岸の環境保護 - 2020年代現状

2020年代に入っても、日本各地の鳴き砂海岸は依然として減少傾向にあります。特に、石川県羽咋市の千里浜海岸や京都府京丹後市の琴引浜といった代表的な鳴き砂海岸は、環境汚染や人為的な影響によって、鳴き砂の機能を失う危機に直面しています。

1. 千里浜海岸(石川県)
千里浜は、全国でも珍しい車で走れる砂浜として有名ですが、車両の通行やタイヤから発生する微細なゴム粉、排気ガスによる汚染が砂に蓄積されています。これにより、鳴き砂特有の音を出す性質が徐々に失われています。加えて、近年の台風や高潮による侵食が激化し、千里浜は年間10メートル以上の砂浜面積が失われています。

企業と地元自治体が連携し、砂浜の回復プロジェクト「SAVE THE BEACH」が進行中です。特に、重機を使わないビーチクリーン活動や、植生による砂の安定化を目指した取り組みが行われています。また、排気ガスの影響を減らすために、車両進入規制も一部強化されています。

2. 琴引浜(京都府)
琴引浜では、観光客の増加や、漁業・観光船からの排水が原因で、油分やプラスチック片の海洋ゴミが砂に混入することが課題です。これにより、鳴き砂の減少が問題視されており、環境保護活動が求められています。2021年には、京丹後市が中心となり、地元企業や「鳴き砂を守る会」などの市民団体と協力し、月1回の海岸清掃を実施。企業としては、京都丹後鉄道を運営するWILLER TRAINS株式会社もサポートに加わり、地域活性化を兼ねた保護活動が進められています。

琴引浜は2020年代に入り、年間約5000トンのゴミが海岸から収集され、その約40%がプラスチックゴミという深刻な現状が報告されています。これに対応するため、プラスチックゴミの削減を目指した「プラスチックフリー宣言」を京丹後市が推進しています。

3. 環境汚染と鳴き砂保護の全国的状況
鳴き砂海岸が全国で31か所確認されていた1996年から、2020年代にはその数がさらに減少し、現在は20か所未満となっているとされています。これには、海洋プラスチック汚染や工場排水の影響が大きく、特に四日市市(三重県)や新潟市(新潟県)の周辺では、産業廃棄物による土壌汚染が鳴き砂の失われた原因とされています。

また、2020年代の特徴として、鳴き砂保護活動に対する企業のCSR(企業の社会的責任)活動が増加しており、例えば、化学メーカーの住友化学や、電力会社の関西電力が主導する海洋保全プログラムが各地で展開されています。住友化学は、化学物質の流出防止技術の研究を行い、関西電力は再生可能エネルギーの推進を通じて、間接的に鳴き砂海岸の保護を支援しています。

4. 今後の展望
鳴き砂海岸を守るため、地域住民や観光業者、企業が一体となった保護活動が不可欠です。政府の「環境基本計画」では、2030年までに鳴き砂海岸の保全を強化し、全国の鳴き砂海岸を10か所増やすことを目標にしています。また、砂の汚染を防ぐための法的規制が進められており、2025年には海岸保護法の改正が予定されています。

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