青森県の廃棄物焼却施設統合の歴史 - 1998年から2020年代まで
青森県では、1998年に「広域処理基本構想」を策定し、一般廃棄物焼却施設の統合と広域化を推進する方針を打ち出しました。当時、青森市、弘前市、五所川原市、むつ市、三沢市の6地区では、それぞれ独自に廃棄物処理施設を運営していましたが、老朽化やダイオキシン排出量の問題が深刻化し、新たな処理システムの必要性が高まっていました。
この計画では、県内の焼却施設を集約し、大型焼却施設の新設または既存施設の改修を進めることで、効率的なごみ処理を目指しました。新施設には最新の排ガス処理技術が導入され、ダイオキシン排出量の削減を最優先とする方針が取られました。また、焼却熱のエネルギー回収が行われ、地域の公共施設への熱供給や発電利用も計画されました。こうした取り組みにより、廃棄物の分別・資源化を進めることで最終的な埋立処分量の削減を図ることが期待されました。
### 2000年代の進展
2000年代に入ると、青森県は「循環型社会形成推進計画」を策定し、廃棄物の減量化やリサイクルの推進を強化しました。この計画では、廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進が掲げられ、県内各地でリサイクル施設の整備や分別収集の徹底が進められました。
また、廃棄物処理施設の広域化・集約化の取り組みも進展し、複数の自治体が連携してごみ処理を行う広域連合の設立や、老朽化した施設の更新・統合が行われました。これにより、処理効率の向上やコスト削減、環境負荷の低減が図られました。
### 2010年代の取り組み
2010年代には、環境意識の高まりや廃棄物の増加、埋立処分場の逼迫を背景に、ごみ焼却発電の導入が拡大しました。青森県内でも、廃棄物発電施設の新設や既存施設の改修が行われ、廃棄物からのエネルギー回収が積極的に推進されました。
さらに、2018年には「第4次青森県循環型社会形成推進計画」が策定され、プラスチックごみの削減や食品ロス対策、事業者や市民との連携強化など、持続可能な社会の実現に向けた具体的な施策が打ち出されました。この計画では、廃棄物の発生抑制や資源循環の推進、適正処理の徹底などが重点的に取り組まれました。
### 2020年代の現状と課題
2020年代に入ると、青森県はさらに持続可能な廃棄物処理体制の構築を目指し、広域化・集約化の取り組みを強化しました。県内では、青森市、弘前市、八戸市を中心に複数の廃棄物処理施設が稼働しており、例えば青森市の施設ではガス化溶融方式を採用し、1日あたり300トンの処理能力を持ち、発電能力は7650kWに達しています。
一方で、県内のごみ排出量は依然として高く、令和4年度(2022年度)には約444849トンが発生し、県民1人あたりの1日ごみ排出量は991グラムに達しました。これは全国平均の880グラムを上回る数値であり、ごみ削減とリサイクル率向上が依然として課題となっています。県のリサイクル率は14.0%で、全国平均の19.6%を下回っており、資源循環のさらなる推進が求められています。
青森県は、持続可能なごみ処理を目指して、地理的背景や生活圏を考慮し、6つの広域ブロック(青森市、弘前市、八戸市、五所川原市、十和田市および三沢市、むつ市)を設定し、各ブロック内での効率的なごみ処理体制を構築しています。また、民間企業との連携も進んでおり、日立造船株式会社などの企業がごみ焼却施設の建設・運営に携わり、全国的に高い技術を持つ施設が県内に導入されています。
しかし、依然として課題は残されています。県民の意識向上や分別の徹底、さらには企業との連携による資源循環型社会の構築が求められます。また、廃棄物処理施設の老朽化対策や新技術の導入を通じて、より持続可能な廃棄物処理体制の確立が不可欠です。
---
**情報源**
1. 青森県環境総合プラン
2. 第4次青森県循環型社会形成推進計画
3. 広域化・集約化に係る手引き(環境省)
4. 日立造船株式会社 廃棄物発電技術資料
5. 令和4年度 青森県一般廃棄物処理実態調査報告
No comments:
Post a Comment