柳川組・抗争の最中の会���（1960年代半ば）

柳川組・抗争の最中の会話（1960年代半ば）
―― 大阪・西成のしきば（事務所）にて

組員 A: 「親分、向こうがまた動いとります。昨夜、新世界の飲み屋でうちのワカ（若い衆）が絡まれました。向こうはナメとるみたいですわ。」

柳川次郎: 「ほうか。それで、そいつはどうした？」

組員 B: 「向こうが先に手ぇ（手出し）してきたんで、こっちもやりました。うちのも病院送りですが、向こうの一人はねんね（重傷・死亡）やいう話です。」

柳川次郎: 「……余計なことはすんな言うたやろ。今はまだ時やない。ここで派手にやったら、サツ（警察）の締め付けが厳しゅうなる。」

組員 A: 「せやけど、このままやとナメられます。向こうは鬼頭の若造（若頭）が仕切っとるそうです。」

柳川次郎: 「……ふん。あいつか。ええか、今のうちはケツ（手を出すこと）浮かすな。向こうがどう出るか見極める。」

組員 B: 「でも、このまま黙っとったら……」

柳川次郎: 「大事なんは"勝つこと"やのうて"シノギ（生き残ること）"や。熱うなったら、こっちがワリ（損）や。わしがええと言うまでは勝手に動くな。」

組員 A: 「……わかりました、親分。」

柳川次郎: 「それと、新世界の若い衆には、こっちの気持ちをちゃんと伝えとけ。"柳川は逃げた"なんて思わせたらあかん。やる時は一気にやる。その時までグズ（辛抱）しとけ。」

組員たちは静かにうなずいた。柳川次郎は煙草に火をつけ、じっと灰皿を見つめながら、次のネタ（策）を考えていた――。