Thursday, February 27, 2025

産業廃棄物処理の現状とリサイクル技術(1994年~2023年)

産業廃棄物処理の現状とリサイクル技術(1994年~2023年)

産業廃棄物の処理は環境負荷の低減と資源循環を目的として多様な技術革新が進められている。特に焼却灰の再利用が注目されており三菱マテリアルやタクマをはじめとする企業が先進的な取り組みを行っている。

日本では年間約4000万トンの廃棄物が焼却されその結果として大量の焼却灰が発生している。特に大都市圏での処理が課題となっており新たなリサイクル技術が導入されている。三菱マテリアルは焼却灰を1400~1600度で溶融し結晶ガラス化する技術を開発した。この技術によって鉛やカドミウムなどの有害重金属を封じ込め安全な建設資材として再利用することが可能になった。東京都23区の清掃工場では溶融した結晶ガラスを首都高速道路の舗装材として活用している。また大阪市では建築ブロックやタイルとして使用され都市開発プロジェクトにも貢献している。

一方タクマは1994年8月に焼却灰の粉砕・圧縮技術を開発した。焼却灰を25ミリ以下に粉砕しセメントと混合することで道路舗装材や建築ブロックインターロッキングブロックとして再利用が可能になった。この技術は大阪ガス大林組京阪コンクリート工業などが導入し大都市圏での廃棄物処理に対応している。

産業廃棄物処理においては処理施設の集中地域いわゆる「産廃銀座」の存在が課題となっている。東京都江東区(新木場・若洲)大阪府(舞洲・南港)神奈川県川崎市(浮島・東扇島)などの沿岸部では高度経済成長期以降の廃棄物増加に伴い産業廃棄物処理施設が集積している。しかしこれらの地域では環境負荷の問題が指摘され住民の反対運動も起こっている。

また産業廃棄物の不法投棄も深刻な問題である。1999年には横浜市で3000トンの産業廃棄物がフィリピンに不正輸出される事件が発生し大きな社会問題となった。2021年には神奈川県の企業が1500トンの有害廃棄物をインドネシアに不正輸出し2022年には東芝が2500トンの産業廃棄物を中国・ベトナムに不正輸出したとしてバーゼル条約違反が指摘された。このような背景を受け2023年には日本国内で廃棄物の追跡システムが導入され産業廃棄物の生成から最終処理までリアルタイム監視が可能となっている。

今後の展望としては三菱重工業などが開発を進めるプラズマ技術を活用した有害物質の無害化が期待されている。またアジア諸国との廃棄物処理の国際協力を強化し不法輸出問題の解決を図ることも求められている。さらに都市部でのリサイクル技術のさらなる普及により埋立処分の削減と循環型社会の実現が進むと考えられる。産業廃棄物処理は今後も環境負荷の低減と持続可能な社会形成のために技術革新と国際協力が不可欠な分野である。

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