「海が紡ぐ静かな灯火」—海洋温度差発電の可能性—
海洋温度差発電(OTEC)は、海水の表層と深層の温度差を利用して発電する再生可能エネルギー技術である。熱帯・亜熱帯地域に適し、クローズドサイクル方式、オープンサイクル方式、ハイブリッド方式の3つの方式がある。特にハイブリッド方式は、発電と同時に淡水を生産できる点で注目されている。この技術の強みは、昼夜を問わず安定した発電が可能であり、深層水を活用した水産養殖や冷房といった用途にも広がる点にある。しかし、発電効率の低さや設備コストの高さ、環境への影響といった課題も残されている。
日本では沖縄県久米島を拠点に実証実験が進められており、ゼネシス、商船三井、佐賀大学が技術開発に取り組んでいる。商船三井は2026年までに1MW級の商用化を目指し、環境省の支援も受けている。海外ではハワイやインドネシアなどで実証実験が行われ、フランスや韓国でも研究が進められている。OTECは、発電だけでなく淡水生産や冷房と組み合わせた社会基盤としての可能性を秘めており、海がもたらす未来の灯火として期待されている。
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