黒ダイヤに沈む夜 ― 炭鉱の街に蠢く双葉会と小野組の影
場所:筑豊の炭鉱町にある古びた料亭「つるや」の座敷。
登場人物:
- A(双葉会 幹部・岩崎) … 山口組系の大親分。筑豊の利権を牛耳る。
- B(小野組 幹部・谷村) … 小野組の武闘派。土建業を基盤に勢力を拡大中。
- C(仲介人・権蔵親分) … 地元の名士で、昔は自らも修羅場をくぐった男。
筑豊の料亭にて ― 硬軟交える舌戦
C(権蔵親分)(猪口を揺らしながら)
「まぁまぁ、堅ぇこと言うなや。お前らも顔突き合わせて飲むのは久しぶりだろ?ここで血を見るようなことすんなよ。俺の店だぞ。」
A(岩崎・双葉会)(腕を組みながら)
「血なんざ見たかねぇがよ、こっちのシマにズカズカ入り込まれちゃ、黙ってるわけにもいかねぇだろうが。谷村さんよ、てめぇら最近、ちょいとばかし調子に乗ってねぇか?」
B(谷村・小野組)(にやりと笑いながら)
「調子?そりゃまぁ、いい風吹いてんのは事実だがな。でも岩崎さん、あんたらこそ、ずいぶん古臭ぇやり方してんじゃねぇか?この炭鉱も、そのうち堀り尽くされちまうってのに、いつまで『黒ダイヤ』にしがみつくつもりだ?」
A(岩崎・双葉会)(低く笑いながら)
「はっ、てめぇ、まるで時代の先を見てるような口ぶりじゃねぇか。お前らの土建屋稼業、どっち向いてもこっちのシマ通らなきゃ回らねぇこと、忘れたとは言わせねぇぜ?」
B(谷村・小野組)(煙草をくわえ、火をつける)
「忘れちゃいねぇよ。ただな、こっちにも付き合いってもんがあってな。東京の大親分衆が言うには、これからは"地上"の仕事が熱ぇらしいぜ?そっちはまだ炭鉱の土の中に埋まってんのか?」
C(権蔵親分)(呆れながら)
「お前らなぁ、どっちもどっちじゃねぇか。岩崎、そっちは坑道の番人、谷村、お前らはコンクリの親方、喰うもん違ぇんだ。住み分けってもんを考えろや。」
A(岩崎・双葉会)(盃を置きながら)
「住み分け?そりゃご立派なこったがなぁ、こっちのシマのモンが勝手に"足袋"脱がされるのは、気分が悪ぃんだよ。」
B(谷村・小野組)(肩をすくめながら)
「気分が悪いねぇ……そりゃあ、こっちも同じだ。掘り尽くされた穴にしがみついてるより、新しいビルでも建てるほうが気分がいいと思うんだがな?」
C(権蔵親分)(ため息をつきながら)
「ったく、どいつもこいつも言うことだけは達者だな……まぁ、今日のところはこのくらいにしとけや。この後も炭鉱街で商売するなら、ケツモチの機嫌も考えねぇとな?」
A(岩崎・双葉会)(立ち上がりながら)
「まぁ、今日のところはこのくらいで勘弁してやる。だがなぁ、谷村、お前らの"鉄砲玉"がこっちの堀場で余計なことしねぇように、しっかり締めとけよ?」
B(谷村・小野組)(にやりと笑いながら)
「そっちこそ、"ダイナマイト"の使いどころ間違えんなよ?」
C(権蔵親分)(頭を抱えながら)
「はいはい、わかったわかった、帰れ帰れ。ったく、俺の酒がまずくなるわ!」
岩崎と谷村は、それぞれの舎弟を引き連れ、ふてぶてしい笑みを浮かべながら料亭を後にした。筑豊の夜は、今日もまた、火薬の匂いと黒ダイヤの埃にまみれていた――。
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