Tuesday, May 13, 2025

## 「耕されぬ地に蘇る商いの灯」――汚染土壌ビジネスの光と影・2007年11月

## 「耕されぬ地に蘇る商いの灯」――汚染土壌ビジネスの光と影・2007年11月

2007年、日本の都市は静かに大きな転換点に立たされていた。急激に進む不動産証券化と開発投資の潮流のなかで、開発計画に立ちはだかったのが、かつての産業遺産――汚染された土地だった。

2003年に施行された土壌汚染対策法は、特定有害物質を使用していた工場などの跡地に対し、調査と浄化を義務づける内容だった。だが、それは単なる環境保全ではなかった。都市の再開発を進めるためには、土壌の履歴――すなわち「記憶」を知ることが不可欠となり、調査・浄化が経済合理性の鍵を握る時代が到来した。

汚染土壌の調査と診断を請け負う企業が急増。とくに不動産証券化の進展により、土地のリスク評価に第三者の「セカンドオピニオン」を求めるケースも増えた。京都に拠点を置く企業は、年間300件以上の土壌調査をこなし、うち15%がこの独立評価という新しい需要だった。

一方で、技術革新も進む。荏原が開発した鉛汚染土壌の電解処理は、従来の半額近いコストでの浄化を可能にし、オンサイト処理の現実的な選択肢となった。さらに、DOWAや清水建設といった大手も、自前の処理施設を整備し、官民の連携を背景に「ビジネスとしての土壌浄化」が現実味を帯びていった。

だが、最大の課題は「ブラウンフィールド」にあった。汚染のために浄化費が土地価格の三割を超え、事実上売買が不可能となった土地群である。これらは都市の空白地帯として放置され、再開発の障害となっていた。

環境省の試算によれば、日本全国で約2万8000ヘクタール、資産価値にして10兆円を超えるブラウンフィールドが存在するという。アメリカではすでに法整備とリスク免除制度が進み、土地の再活性化が図られていたが、日本ではようやく議論が始まったばかりだった。

滋賀県のベンチャー企業「淡海環境デザイン」は、こうした土地を活用するための簡易リスク評価サービスを展開。2007年10月には宅建免許も取得し、調査から不動産流通、開発支援にまで事業を拡大した。築地市場移転を巡る豊洲の土壌問題など、都市の再構築における象徴的な問題も重なり、環境と経済、そして社会の接点として「土壌」が再び脚光を浴びた年となった。

いま、汚れた大地の上に、新しい都市と経済の倫理が芽吹こうとしている。土壌浄化とは、単なる技術的解決ではない。それは過去と向き合いながら、未来の環境価値を問い直す、日本のもうひとつの都市計画の物語であった。

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