Sunday, October 13, 2024

福岡県カネミ油症事件によるPCB問題 - 1968年5月

福岡県カネミ油症事件によるPCB問題 - 1968年5月

1968年に発生した福岡県を中心としたカネミ油症事件は、日本国内でPCB(ポリ塩化ビフェニル)の危険性が広く認識される契機となりました。この事件は、福岡県に本社を置くカネミ倉庫株式会社が製造した米ぬか油に、PCBを含む熱媒体「カネクロール」が混入したことから発生しました。結果として、約1万4千人の消費者が、油症と呼ばれる深刻な中毒症状を引き起こしました。症状には、発疹、倦怠感、肝機能障害、さらには生まれてくる子どもへの健康被害が含まれました。

事件後、日本政府は1972年にPCBの製造・使用を禁止しましたが、PCBは広範な産業分野で使用されていたため、処理に困難を伴いました。PCBは絶縁性や耐熱性に優れ、特に変圧器やコンデンサーの冷却材として使用されていたため、約4万トンものPCBが日本国内に残留し、その多くが未処理のまま保管されています。PCBは極めて分解しにくい物質で、自然界での分解には100年以上かかるとされています。

この事件を受け、適切なPCB廃棄物処理が重要視され、特に高温焼却処理による無害化技術が導入されました。しかし、焼却時に発生するダイオキシンの問題も指摘され、処理施設の建設が進まない状況も続いています。日本国内には依然としてPCBの廃棄物が大量に残っており、2027年までに全廃する計画が進行中です。

福岡県で発生したカネミ油症事件は、化学物質の管理が不十分であった時代の象徴的な事例であり、その後の環境政策や産業界の取り組みに大きな影響を与えました。

No comments:

Post a Comment