経営の高度化とともにコンサルティングビジネスには多様なシーズがある。
ISO 14001認証取得のためのコンサルティングビジネスはすでに花開いているが、今後はゼロエミッションや省エネ、環境会計、環境h報告書など、より具体的な分野でのコンサルティングビジネスが本格化しそうだ。
その中のひとつ、LCA(ライフサイクルアセスメント)分野でコンサルティング事業を展開しているのがピーイーアジア株式会社だ。
国内において、先進的な一部の企業で新製品開発時の環境配慮の織り込み、あるいは環境ラベルの添付などの目的はさまざまにLCAの取り組みが本格化し、徐々に各企業へと裾野を広げる中、同社も軌道に乗り始めている。
LCAコンサルティングのパイオニア、PE社。
同社は99年5月、LCAコンサルティング事業の草分け、独PEヨーロッパ(本社デッティンゲン)の日本法人として設立した。
環境アセスメントなどを手掛ける環境調査技術研究所(東京都港区)とPEヨーロッパの合弁会社(資本金2000万円。
PE49%、環境調査技術研究所35%出資。
社長はPE社長コンラートザウアー氏が兼任)で、企業に向け、LCA手法に基づいた環境負荷低減手法の提案事業を手掛けている。
日本では当時、そして現在もまだまだ馴染みの薄い事業だが、PEヨーロッパではすでに多くの実績を持つ。
PEヨーロッパ社は91年に設立。
欧州、北米でこれまで多くのLCAコンサルティング事業を展開し、クライアントには錚々たる企業が並ぶスタッフはパートタイムを含め30人弱。
年商は250万ドイツマルク(約1億6250万円)。
PE社の事業は、まず資源の採取から生産、流通、廃棄までを工程ごとに分け、物質とエネルギーの流れを把握する。
それを基に各段階で環境負荷を数値化し、LCA評価し、省エネ、再資源化などの視点で既存製品や各工程の見直し、あるいは新製品の開発の際に改善策などを提案する。
実際のコンサルティング例では、年間100万台を扱う塗装工場を所有するあるドイツの自動車メーカーがある。
その塗装工場では作業所内の温度を20~22度に設定していたが、PE社の調査・分析の結果、そこまで厳しい温度管理をしなくても品質は保てると判断し、温度幅を2度広げることを提案した。
それにより、エネルギー消費量が減り、CO2排出量を35%削減し、年間500万ドイツマルク(約3億2000万円)のコスト削減にも結びついたという。
ライフサイクルエンジニアリングの考え方。
PE社のコンサルティングの中で最も特徴的なのが、「環境側面」「コスト」「技術性」を同じ評価軸に換算し、総合的に評価していくLCA手法だ。
PE社ではこれをLCE(ライフサイクルエンジニアリング)と呼んでいる。
従来学術的だったLCAをより実業に近づけ、LCAを単なる評価ツールとしてではなくエンジニアリングに応用できるようにすることが同社の基本的な考え方となっている。
環境側面はLCA、コストはLCC(ライフサイクルコスト)で評価するが、技術性については、開発チームあるいは企業の目標値に対してどれだけ乖離しているかで判断する。
したがって、A社では技術性のポイントが高くても、同じことを行っているB社でも目標次第では同様の高い技術性ポイントになるとは限らない。
しかし、自社内での事業や製品開発の方向性を判断する材料としては有効なデータとなる。
これらをPE社の独自のノウハウで同じ評価軸に換算することで、技術性は高いがコストがかかる、環境側面は優れているが技術性は低い、あるいは技術性と環境側面が優れているものはコストがかかるが、企業の看板として一般にもアピールできるといった判断も3軸の兼ね合いで考慮できるというわけだ。
これは企業にとって強力な判断材料となる。
「調査や評価はLCAの一部分に過ぎない。
そこから何を読み取り、製品の開発や工程における環境負荷の低減、さらにはコスト削減に結びつけるか。
なぜLCAに取り組むのか、言い換えれば企業のニーズはそうした部分にある」(鳥之彬さん)。
日本での事業展開。
ピーイーアジアでも、こうした考え方に沿って事業を展開している。
LCA手法をもとに環境負荷と製造コスト削減を両立する改善策の具体的な提案事業のほか、企業が独自に行ったLCAを評価し、正当であるか判断するクリティカルレビュー作成なども手掛けている。
「LCAの計算請け負い業ではなく、顧客と一緒に改善点を見つけ出しフォローできるような一心同体となったコンサルティング事業が当社の得意とするところです」(羽鳥さん)。
実際、PE社がコンサルティングを手掛けたベンツなどでは、一緒になって作業をしていくことで社内のスタッフが育ち、PEの力を必要としないレベルにまでなっているという。
さらにPE社とともにベンツ特有のLCA手法を開発している。
日本では外部の人間がプロセスに入り込み、一緒に作業していくことを嫌がる風土が依然としてあるが、「そこはどれだけ機密保持ができるかが勝負。
欧米でも同業種の中で多数手掛けているが、競合他社がコンサルを受けているかどうかは気にせず、良い製品を作り収益をあげるためにPEのノウハウを活用している」(羽鳥さん)。
現在のところ主な顧客は、PE本社で実績のある自動車、自動車部品、機械装置メーカー、化学(素材)などである。
日本でも単発でLCAを委託するというよりは、LCA手法を自社のものにするといった狙いも強く、1~2年単位でのプロジェクト契約が多いという。
現在、数社とこのような契約を結び、各企業のLCAプロジェクトに参加するといった形態でのコンサルティング事業を展開している。
また、PE社が独シュトゥットガルト大学と共同開発したLCAソフト「Gabi3」の販売も手掛け、同社の売上の15%程度を占める。
「もちろん主力はコンサルティング事業だが、こうした物販のおかげで比較的楽に事業を軌道に乗せることができた」という。
LCEの考えを色濃く反映しているGaBi3は、データを揃えれば環境負荷のLCA評価と同時に、ライフサイクルの中でどのようなコストが発生するか(例えば電力使用量や物流コスト、廃棄コストなど)のライフサイクルコスト評価も可能である。
技術性も加え3軸によるLCE評価に活用される。
さらにISOで検討されている温暖化係数などを使い、各インパクトカテゴリーごとに評価する機能も付いている。
価格は150万円ほどを予定している。
コストとの関連性といった一番の特徴を活かし、環境会計との連動も考えている。
5年後にはスタッフ25人、年間売上高6億円を目指す。
スタッフは現在のところ5名。
それぞれが各業界についてのスペシャリストで技術的なことにも通じている。
「LCAだけを知っていてもコンサルティングはまずできない。
新製品の開発、材料選定、工程改善などにまで立ち入っていくからです。
その業界の出身者でなければ通用せず、信頼もされません」。
ただし、そのため将来的な人材確保が課題となっている。
日本はISO 14001認証取得件数があっという間に世界一となったように、今後、エコマネジメントシステムの構築からさらに進み、パフォーマンスの評価、LCAなどへの関心が高まる可能性は高い。
「そうした中、単に結果を得るLCAではなく、良い結果を得るプロセスの解析まで踏み込んでいくことが必要不可欠になるはずで、当社の事業もより認知されてくると思われます。
しかしその到来は1年後なのか、それとももっと先なのか。
いずれにしても、ニーズが高まってきたときに、当面はPEから人を借りながらも、いかに人材を確保し育成していくかが難しいタイミングになるでしょう」。
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