02年末にバイオマス・ニッポン総合戦略が策定され、一気に関心が集まっているバイオマス関連市場。
その中で、林業再生の観点からも利活用が期待されているのが木質系のバイオマスだ。
この木質系バイオマスの利活用を進めるうえで注目されているのが木質ペレット(おが粉や樹皮を直径6~8mm、長さ15mmほどの円柱状に固めた成型燃料)。
取り扱いや運送が容易で、均質なため連続燃焼に向くといった長所が見直されている。
葛巻林業は、20年前に木質ペレット製造を国内で初めて開始し、現在まで継続的に生産し続けている国内でも数少ない企業のひとつ
社長の遠藤保仁さんに話を聞いた。
廃棄物対策、新規事業開拓からペレット製造に着手した葛巻林業は、1922年から山林経営、製材業、素材やマッチの軸木などの生産、造林事業など、いわゆる林業を営んできた。
65年からは、低質材の利用を目的に、製紙用など木材チップや漆器の木地の生産を始めた。
そうした中で同社は、81年、木質ペレットの製造に着手した。
木質ペレット製造に目を向けたきっかけは、工場廃材処理の観点にあった。
主力事業である製紙チップ製造の剥皮工程で広葉樹皮(プナ、ナラ、カエデ)が大量に発生し、自社で焼却処理していた。
その当時すでに林業界は年々厳しさを増してきており、コスト削減の方策としてペレット製造に着目した。
「もちろん同時に、森林資源の新規用途開拓も狙っていた。
岩手県の山林は秋田杉のような銘木があるわけでもなく、古くから炭焼きやチップ生産など生き残り策を模索してきた地域柄。
言い方を変えればニッチ、ベンチャーの気質は強い」。
また、79年のオイルショックで、石油価格が高騰していた当時の通産省も石油価格が上がることはあっても下がるペレット製造開発に当たっては米国のペレット用ボイラーの国内普及を目指していた大手商社と提携して着手した。
当初は米国で開発されたオガライト(オガ粉などをプロック状に固めた成型燃料)製造技術の改良で国内産の製造技術開発を進めたが、安定的な生産が確立できず、ペレット成型機(約1億円)を米国から導入した。
ただし、欧米では樹皮原料のペレットはほとんど製造されておらず、成型機も樹皮原料に対応した改良が必要だった。
「それはもう試行錯誤の連続。
今でこそ、樹皮に含まれるリグニンが240度C前後で溶け出す性質を活かし、瞬間的に熱を加えて固めると説明できますが、その頃はたまたまうまく成型できたというのが本当のところ。
製造開始後もしばらくはなぜ固まるのかよく分からなかった」と当時を振り返り苦笑する。
ペレットだけでなく多様な用途開発。
製造開始以来、大手商社によるペレット用ボイラーの普及なども合わせ、需要は急速に増えた。
工場はすぐにフル操業の状態になり、最盛期には年間3000トンのペレットを製造した。
大口顧客は静岡のメロン栽培農家であった。
石油に比べ、30%〜50%も安く、購入者が輸送費を負担して静岡まで運んでも経済的メリットがあった。
しかし、そんな状況も長くは続かなかった。
予想に反した為替の変動や石油価格の値下がりが続き、あっという間に石油に対するコスト優位性を失ったためだ。
葛巻林業の成功を見て、数年の間に全国で約30工場がペレット製造に参入してきたが、ほとんどが撤退していった。
そうした中で同社は現在までペレット製造を続けている。
それを可能にした要因は2つある。
ひとつはペレット製造開発で提携した大手商社が岩手県内でペレット用ボイラーの普及を進め、岩手県もそれを積極的に支援してきたこと。
そしてもうひとつが、ペレット製造設備を活用して、畜産敷料コンポスト混入資材など樹皮の新規用途開発、販路開拓を怠らなかったことであり、社会的にも代替エネルギーとして認められたことだ。
現在、原料となる広葉樹は、直営素材生産分が40%、葛巻町森林組合などからの購入が60%である。
木部を製紙用チップにし、年間約千トンを生産する樹皮からペレット、畜産敷料、コンポスト混入資材を生産している。
特に近年、需要が伸びているのが畜産敷料である。
チップ生産時の樹皮だけでは足りず、近隣のチップ工場から1000円/tで300トンを購入しているほどだ。
近隣の畜産公社や畜産農家に32円/kgで販売している。
「使い終わった敷料は堆肥原料にもなります。
実際、ユーザーの中には、販売者に戻ってきた敷料を再び買い戻している人もいるみたいですよ」。
一方、ペレットでもより使いやすいサービスを提供している。
燃焼後に発生する灰のリサイクルである。
現在、木質ペレットの主な顧客は、花巻と二戸のスイミングスクール(温水プール、給湯)、葛巻町炭の博物館(床暖房)、盛岡や花巻周辺の温泉旅館(温泉ボイラー、暖房)、近隣の畜産、ビニールハウス農家(温風ボイラー、暖房)、住田町世田米保育園(暖房)などである。
ペレット焼却灰は、ビニールハウス農家では自家消費、花巻のスイミングスクールは農業試験場に無料で引き取ってもらっているが、それ以外は、葛巻林業がペレット配達時に無償で引取っている。
そしてそれらを近隣のタバコ農家に輸送費とほぼ同価格で販売(2000円/t)している。
根底にあるのは総合利用型林業経営である。
ただし、製造量は最盛期に比べて3分の1の年間約1000トンであり、同社の01年度の売上高は約6億円であった。
売上の構成比率は、製紙用チップが50%、木地が30%、ペレットや畜産敷料、緑化基盤材など樹皮を利用した製品が20%である。
木質ペレットの売上は約2000万円に過ぎない。
また、価格で見ても、同じ樹皮から作るのであれば、ペレットよりも畜産敷料のほうが儲かる。
「しかし、ペレット製造を始めた当初からペレットボイラーを導入し、支援してくれたユーザーに迷惑をかけたくなかった。
また、いずれ石油を浪費できなくなる時が必ず来ると思い、それまでは技術を継承しなければいけないとの考えから生産を続けてきました」。
そうした努力が実り、98年頃からまたペレットの引き合いが増え始め、近年のバイオマス利活用に対する関心の高まりで、自治体やNPO、企業などの見学が殺到している。
ただ、遠藤さんは事業としてペレットにそれほど固執しているわけではない。
森林資源を総合利用するうえでの選択肢のひとつにしか過ぎない。
「林業・木材界の衰退は、輸入外材に押されたこともありますが、必ずしもそれだけではありません。
住宅分野のみをターゲットにして、森林資源の総合利用、新規用途開発の発想がなかったことが大きいと思います」。
そんな遠藤さんは、すでに木材に含まれる成分の抽出利用など新たな方向にも目を向け始めている。
ペレット製造を開始してから20年、ほとんどの人がバイオマスとしての森林資源に可能性を見出せないうちに、葛巻林業は総合利用型林業経営の発想をベースに、一歩先を走り始めている。
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