Wednesday, August 27, 2025

### 籾殻家具に宿る時代の声 ― 2007年滋賀環境ビジネスメッセの現場から

### 籾殻家具に宿る時代の声 ― 2007年滋賀環境ビジネスメッセの現場から

2007年11月、滋賀県長浜市で開かれた「滋賀環境ビジネスメッセ」において、学習机やオフィス家具を手掛けるイトーキは、米の籾殻を圧縮成型して作る新素材「ハスクボード」を発表しました。担当者の森本康平氏は、来場者に向けてこう語りました――「既存のパーティクルボード加工法を応用し、最初から自分たちで考えて作りました」。その言葉からは、大手企業でありながらも外部技術に安住せず、自ら手を動かして挑む開発現場の息遣いが伝わります。

当時の日本社会は、原油価格の高騰や国際的な資源争奪の影響を強く受けていました。建材に使うスチールや合板の価格が上がり、国内メーカーは安定供給の道を模索していたのです。そうした状況下で、農業副産物の籾殻という「ありふれたが余っていた資源」に目をつけたイトーキの発想は、資源循環型社会を模索する時代の要請そのものでした。日本国内では年間200万トンもの籾殻が発生し、その3割は焼却処分されていたといいます。その余剰分を家具の天板に活かす試みは、環境負荷の軽減と資源の有効活用の両立を狙うものだったのです。

森本氏はさらに、「滋賀県内の籾殻の2%を利用すれば、当社の学習机天板をすべて賄える」と説明しました。この言葉は単なる技術紹介ではなく、地域資源と産業を結びつけるビジョンを提示したものでした。籾殻を細かく粉砕し、接着剤と混ぜてボード骨格に流し込み、熱でプレスする。その結果生まれた板材は、籾殻特有のシリカを18%含み、硬質で意匠性にも優れた仕上がりとなり、デザイン性や強度でも従来品に引けを取らないものでした。

この展示が注目を集めた背景には、2000年代半ばから広がった「環境配慮型商品」への社会的関心があります。京都議定書の発効(2005年)を経て、自治体や企業は環境報告書やCSR活動を強化し、消費者も「環境に優しい製品」を選択する傾向を見せ始めていました。そうした潮流の中、籾殻家具は単なる素材代替ではなく、「未来の資源循環型ライフスタイル」を象徴する存在として受け止められたのです。

現場での森本氏の言葉は、展示ブースを訪れた人々にとって、環境問題を身近に感じさせる生きたメッセージでした。籾殻という身近な素材が学習机に生まれ変わる――その驚きと納得は、環境ビジネスの時代が「遠い理念」から「生活の実感」へと歩みを進めつつあったことを示していたのです。

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