宇野浩二(1891-1961)――失敗を抱えたまま笑いへ、そして文学へ 1910年代から1950年代
大阪船場の商家に生まれた宇野浩二は、貧乏と病気と借金に悩まされながらも、飄々とした語り口と自嘲のユーモアで人の弱さに寄り添った。大正デモクラシーの開放感、震災後の出版ブーム、カフェーや寄席、映画の隆盛は観察の場を広げたが、生計は不安定で、彼の困窮体験を深めた。昭和恐慌と軍部台頭の下、思想統制が強まるなかでも、彼は綱領よりも生活の感情の襞を拾い、「どうしようもない善人」という人間像を描いた。戦後の闇市と価値観の瓦解を前に、善悪を単純に裁かず、惨めさをひっくり返して笑いに変える大阪的話芸で現実へ連れ戻す。毒舌と甘え、優柔不断と優しさが同居する人物像は、三つの断層—戦前・戦中・戦後—をまたいで、人間の弱さの尊厳をすくい上げた。
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