感染性廃棄物をめぐる混乱と行政の揺らぎ 2003年前後
2003年前後の日本では医療現場における感染性廃棄物の取り扱いが大きな課題となっていた。廃棄物処理法に基づく分類は存在していたものの、判断基準の曖昧さが現場の混乱を招き、医療機関ごとに判断が異なる状況が続いた。血液が付着したガーゼや点滴セットなどは状況によって感染性にも非感染性にも分類され得るため、医療従事者は常に判断に迷わされていた。
感染性と扱われれば処理費用が高騰する経済的負担もあり、九〇年代後半から社会問題となっていた院内感染の流れの中で、安全側の判断とコスト削減の判断が衝突し続けた。さらに二〇〇三年にはSARSが世界的に流行し、日本でも感染症対策の重要性が急速に意識され、従来の曖昧な基準では対応が難しいという認識が広がった。
こうした背景から環境省は感染性廃棄物の定義明確化に踏み切り、疾病種、発生場所、汚染度、作業者への危険性を総合評価するリスク分類方式への移行を進めた。血液付着が必ずしも高リスクではない一方で、手術室の廃材は原則感染性とするなど、従来の一律分類から合理的な基準へと改訂が図られた。曖昧さによって医療機関が自ら廃棄物を消毒して通常廃棄物化する危険な事例も見られ、統一基準の策定は急務となっていた。
この取り組みは今日の医療廃棄物管理制度の基盤を形成し、感染症対策と廃棄物行政が交差する重要な転換点となった。
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