〈影を喰らう都市の縁――1950年代、赤線に棲んだ若者たち〉
戦後の東京。表通りには復興の熱気が満ち、裏通りには沈黙と依存の関係が潜んでいた。吉原や洲崎、鳩の街など、赤線地帯に息づいていたのは、娼婦とともに生きる若い男たち――俗に「チンピラ」「ヒモ」と呼ばれた者たちだった。
彼らは裏社会の構成員でも、制度に守られた労働者でもなかった。日雇いと博打の合間に女の稼ぎに寄り添い、時に暴力を振るい、時に甘い言葉をささやく。男は衣食を預け、女は孤独を預けた。共依存の構図は、搾取と保護の境界で揺れ続けた。
売春防止法が施行された1958年、街は変わり、看板が消え、女も職を失った。男たちもまた、行き場をなくし、暴力団に吸い込まれるか、都市の底に沈んだ。
制度の外に棲んだ彼らの影は、軽蔑と風刺の言葉に変えられながら、やがて忘れられていく。しかしそこには確かに、欲望と愛情、生と沈黙の均衡があった。あの時代、灯の揺れる部屋の奥で、彼らは女とともに都市の余白を生きていたのだ。
No comments:
Post a Comment