Thursday, December 11, 2025

石原慎太郎――戦後の価値観を挑発し新しい若者像を切り開いた作家・政治家 1950-1980年代

石原慎太郎――戦後の価値観を挑発し新しい若者像を切り開いた作家・政治家 1950-1980年代
石原慎太郎(1932-2022)は戦後社会の価値観を鋭く突き崩した作家でありのちに政治家としても大きな影響力を持つ多面的な人物である。彼が文壇に登場した1950年代半ばは敗戦から約10年が過ぎ社会が急速に復興し始めた時期で若者の間には新しい消費文化や反権威的気分が生まれていた。1955年太陽の季節でデビューした石原は若者の肉体性や暴力性を正面から描き文学界と社会に衝撃を与え戦後第2世代の感覚を日本文学にもたらした。

高度成長の入口にあった日本では既存道徳が揺らぎモラルの空白が生まれていたが石原の作品に登場する若者たちはその空白を体現するかのように制度や家族から自由で享楽的な主体として描かれた。処刑の部屋、青年の樹などは太陽族ブームを生み文化史に大きな影響を与えた。

1960年代以降石原は政治活動へ軸を移し安全保障、外交、防衛政策などで積極的に議論を展開した。学生運動が激化し社会がイデオロギー化する中で反権威的作家から保守政治の論客への転身は戦後日本の価値観の揺らぎを象徴している。のちに東京都知事となって示した強い行政姿勢や国家観は作家時代の思想とも地続きであり文学と政治が交錯する独自の立場を形づくった。石原慎太郎は文学と政治の双方で戦後日本の精神を体現し続けた特異な存在である。

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