Friday, May 23, 2025

潮の彼方から届く拒絶の手紙――漂着ごみが告げた海の境界線(2000年)

潮の彼方から届く拒絶の手紙――漂着ごみが告げた海の境界線(2000年)

2000年、静岡大学の山口晴幸教授が調査した全国500カ所の海岸には、実に40万個を超える漂着ごみが散乱していた。驚くべきことに、その6〜7割が中国や韓国から流れ着いた「外国ごみ」であり、プラスチック容器や漁網が伊豆七島や南西諸島に山のように積もっていた。日本の海は、いつしかアジアの生活廃棄物が押し寄せる沈黙の埋立地と化していたのである。

当時、日本は京都議定書(1997年)を経て、温暖化対策の国際責任を意識しはじめていた。しかし、この「漂着ごみ」という問題は、炭素の数値では語れない、より目に見える形で国境を越えてきた。従来のような国内処理や啓発だけでは到底太刀打ちできず、「誰が責任を持つのか」「誰と連携すべきか」といった新たな問いを突きつけたのだった。

この現象は、急成長を続けるアジアの都市圏が、排出物を処理しきれないまま海に流し、それが海流に乗って日本列島へ届くというグローバルな構造に根ざしていた。とくに黄海や東シナ海は、排水の収束点であり、国際的合意なくして解決の糸口すら見えない。山口教授の調査は、日本の海がただの自然資源ではなく、世界の無意識が漂着する「境界線」であることを突きつけた。

それは、まるで海が人間社会へ突き返した"拒絶の手紙"であり、海の沈黙のなかに潜む声なき声だった。

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