Saturday, March 15, 2025

夜を包むスキャット――1970年代、日本の都会に響いた由紀さおり

夜を包むスキャット――1970年代、日本の都会に響いた由紀さおり

由紀さおりは1969年に『夜明けのスキャット』でデビューし、独特の歌声と上品な雰囲気で人気を集めた。高度経済成長が終焉を迎え、1973年のオイルショック以降、日本社会は「豊かさの中の不安」を抱え始めた。音楽の世界ではフォークやニューミュージックが台頭する一方、彼女の都会的なムード歌謡は中高年層やナイトクラブ、スナックで支持され、大人の音楽として確固たる地位を築いた。

1970年代のテレビでは歌番組が人気を誇り、由紀さおりも『紅白歌合戦』『夜のヒットスタジオ』などに出演。アイドルブームが進む中でも、彼女の落ち着いた歌唱は銀座や赤坂のバーで流れる定番となり、時代の流れに左右されず活躍を続けた。同時期に活躍したちあきなおみや青江三奈と並び、ムード歌謡の代表格として知られた。

1977年の彼女は、テレビ、ラジオ、ディナーショーなど多方面で活動し、歌謡界の一角を担っていた。高度成長から成熟へと移る日本社会において、彼女の楽曲は「都会の夜を彩る一曲」として定着し、大人の音楽としての存在感を示し続けた。

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