Monday, May 26, 2025

海鳴りは温む――二十一世紀の魚たちの旅(2007年春)

海鳴りは温む――二十一世紀の魚たちの旅(2007年春)

2007年、気象庁が発表した日本近海の海水温の上昇は、地球温暖化の影が、食卓に並ぶ魚や海藻にまで及びはじめたことを突きつけた。和歌山では、昔ながらのマサバに代わり、熱帯系のゴマサバが漁獲の主役となり、漁師の嘆きが潮騒とともに響く。津軽海峡では、寒流を好むマコンブが育たず、「磯焼け」が進む中、代わって暖流系の海藻が繁茂し、かつての豊穣な海の姿は消えつつある。瀬戸内海でも冬期に赤潮が発生し、ノリの養殖が壊滅的な打撃を受けている。海の温度がわずかに変わるだけで、魚たちは旅立ち、漁場は姿を変える。これは単なる自然の変化ではない。人が生んだ熱が、静かに海を揺らし、生業を変え、風土を塗り替えてゆく――そんな時代のはじまりだった。

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