自然を守ることは、ほんとうに貧しくなることなのか?――EU農村政策の静かな革命(1995年頃)
1995年ヨーロッパは統合の風のなかにあった。だがその足元では農村の沈黙が広がっていた。ドイツ・バイエルン州の田園では都市化と工業化に押されて森は荒れ放牧地は消え伝統の暮らしは絶えかけていた。かつて自然を守る者は貧しくなると言われたその地にある転換が起きていた。
EUと州政府は農薬を減らす放牧を続ける森林を守る――そんな営みに環境給付金という名の支援を与えた。自然保護は補助金の対象となり労働として正当に評価されたのである。自然と共にあることがようやく生活と呼べるものになった。
この制度設計は単なる金銭の話ではなかった。自然との共生は理念で終わらず仕組みの中に落とし込まれた。かつて自然か経済かの二項対立にあった政策を自然と経済へと繋ぎ直す哲学がここにあった。
では私たちはどうか。日本でも中山間地は高齢化し限界集落が増えていた。自然と共に生きるとは遠い理想なのか。それとも制度の形を変えれば近くにある未来なのか――。ヨーロッパの村から届いたこの問いは今もなお日本の農政に答えを促している。
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