Saturday, March 15, 2025

■インター・ドメイン株式会社の従業員は、社長を含めて2名。

■インター・ドメイン株式会社の従業員は、社長を含めて2名。
これまで「ベンチャー訪問」の連載で取り上げてきた中で最も小規模な企業である。
しかしながら、離島などに需要のある独立電源方式の風力発電では国内シェアの半分以上を占め、97年の売上見込みが初めて10億円を超えるなど、ニッチな市場ながら、着実に成長している。
最近では、八丈島クリーンアイランド構想の一環として、同島に計20キロワットの風力発電機を設置して注目を集めた。
同社の杉本信策社長にお話をうかがった。
●自治体の独立電源方式の風力発電をコーディネート杉本社長がそれまで勤めた商社を辞め、インタードメイン株式会社を設立したのは89年のこと。
会社設立のそもそものきっかけは、海洋開発の仕事をしたいという学生時代からの夢だったという。
しかしながら、会社設立後すぐには希望通りの仕事はできず、しばらくはヨットの輸入などを手掛けていた。
このヨットの仕事を続ける中で、92年に風力発電機を知る。
「海外のヨットの取引会社から、欧州で売れ行きがいいので日本でも大型風力発電機の羽を扱ってみないかという話がありました。
そこで日本での市場を調査してみたところ、とてもじゃないが当時の日本に何千万、何億円という大型の風力発電機の需要はなかった。
しかし興味を持つ層は確実に存在したので、小型の風力発電機ではどうかと考えたわけです」。
こうして風力発電機を扱うようになり、現在では同社は風力発電専門企業となっている。
風力発電には、自家発電して自己消費する独立電源方式と、生産した電力を電力会社に売る売電方式の2種類がある。
前者は主にインフラの未整備な離島や山頂などで需要があり、後者は売電ビジネスの装置としてここ23年注目されている。
インター・ドメインで扱う風力発電機は全て独立電源方式で、家庭で使う趣味的要素の強い1230万円の小型のものから数千万円する本格的なシステムまでを揃えている。
「設置要望を受けての風況調査に始まり、装置の選定、輸入、設置までをトータルでコーディネートしています。
実際の顧客は市町村がほとんど。
全国の独立電源方式の風力発電の半分以上を当社が手掛けています」。
システム販売としてのこれまでの実績は、山形県「風車村」の電気自動車補助電源、愛媛県「風の博物館」の多目的電源、愛知県のテーマパークの噴水の電源、北海道の水門小屋の室内灯電源など。
扱う装置は、コスト面から海外の輸入品がほとんどだという。
●八丈島クリーンアイランド島構想97年6月には、八丈島に5キロワットの風力発電を4基設置した(写真参照)。
同島では「クリーンアイランド八丈構想」を打ち出しており、風力発電の他にも、地熱発電、空き缶やPETボトルのデポジット制導入などに取り組んでいる。
設置された風力発電機は、風車本体と蓄電池、ディーゼル発電機はフランス製、自動制御装置はオーストラリア製。
受注価格は工事費込みで4500万円。
「このビジネスでは、経験から生まれるノウハウがある程度必要になります。
例えば八丈島の場合でも、本当は20キロワットの装置を1基設置した方が効率はいいのですが、建築物の高さ制限から10メートル以上の装置は不可能なので、9メートルの装置を4基設置することにしました」。
このように、風況はもちろん、地理的条件やコストなどを考慮して、どの装置をどう組み合わせるかが腕の見せ所になる。
「決してハイテクではなく、むしろ手作りのローテクエネルギーです」。
売電制度などの規制緩和も進み、92年当初と比べて風力発電への認知度もアップしているが、実際に風力発電装置を設置する際の書類の提出などの手続きの煩雑さは今も変わらないという。
八丈島にも風況調査の段階から完全にスタートするまで何十回も通った。
また、もっと小さな発電機設置の場合でも、立ち上げまでにかかる手続きは同じ。
「こうしたプロセスを考えると、大手企業が手掛けるには手間がかかりすぎる。
小回りの利くベンチャー向けの、まさにニッチの市場といえると思います」。
92年に風力発電と出会ってからの5年間は順調に業績を伸ばしてきた。
「今は環境に優しいエネルギーとして注目されていますが、将来的に確実な市場が見込める分野というわけではない。
八丈島のように大きな仕事をやるようになると、個人相手の小さな仕事を時として面倒に感じるようになるのも事実です。
しかし風力発電の裾野を広げることが会社の成長につながると考えて、小規模の仕事でも地道にやっていくつもりです。
ビラミッドの底辺からフォローしないと、風力発電市場も全体として大きくならないでしょうから」。
また、同じく裾野を広げるという面からも、モニュメントや環境教育に風力発電を活かす方向を現在模索中だという。

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