Monday, March 10, 2025

水と人の郷を守る条例 - 2006年12月

水と人の郷を守る条例 - 2006年12月

京都府綾部市は、消えゆく水源の村々を救うため、「水源の里条例」案を市議会に提案した。市東部の5つの集落は過疎高齢化が深刻であり、廃村が現実のものとなりつつある。この条例は、住民の定住を促しながら、地域の特産品開発や山菜などの自然資源の保護を支援することで、水源地の維持と再生を図るものである。

この条例の核心は、水源の保全と人の営みを結びつけた点にある。過疎が進めば、森林管理が行き届かなくなり、水の涵養機能が低下し、土砂崩れや水質悪化のリスクが高まる。都市部の人々が日々享受している清らかな水は、実はこうした里山の手入れによって支えられている。この条例は、村を守ることが水を守ることに直結するという意識を社会全体に喚起しようとしている。

特に珍しいのは、単なる過疎対策ではなく、地域の自然資源を活かしたブランド戦略を盛り込んでいる点だ。山菜や特産品を単なる地元消費品ではなく、付加価値の高い商品として全国に発信し、地域経済を活性化させる狙いがある。定住支援と産業振興を両輪としながら、水源を未来に繋ぐこの条例は、他の地方自治体ではあまり見られない先駆的な試みといえる。

過疎に苦しむ水源の村々が、「人のいない風景」へと変わってしまう前に。この条例が、清流のように地域に潤いをもたらし、新たな人の流れを生み出すきっかけとなることが期待される。

No comments:

Post a Comment