京都府綾部市・水と人の郷を守る条例の歴史(2006年~2025年)
京都府綾部市は、消えゆく水源の村々を救うため、「水源の里条例」案を市議会に提案した。市東部の5つの集落は過疎高齢化が深刻であり、廃村が現実のものとなりつつある。この条例は、住民の定住を促しながら、地域の特産品開発や山菜などの自然資源の保護を支援することで、水源地の維持と再生を図るものである。
### 条例の制定と第1期(2006年~2010年)
この条例は、綾部市が過疎対策と水源保全を一体的に進める初の試みであり、2006年に5年間の時限条例として施行された。当初の対象は5つの集落(市茅野、大唐内、栃、古屋、市志)に限られていたが、定住促進、都市との交流、地域産業の開発と育成、暮らしの向上の4つの目標を掲げ、地域の再生に向けた取り組みが開始された。
この条例の核心は、水源の保全と人の営みを結びつけた点にある。過疎が進めば、森林管理が行き届かなくなり、水の涵養機能が低下し、土砂崩れや水質悪化のリスクが高まる。都市部の人々が日々享受している清らかな水は、実はこうした里山の手入れによって支えられている。この条例は、村を守ることが水を守ることに直結するという意識を社会全体に喚起しようとしていた。
### 第2期(2012年~2016年):対象集落の拡大
第1期の成果を踏まえ、2012年に第2期水源の里条例が施行され、対象集落が56に拡大された。この期間中、集落からの申請を受けて指定する「指定申請制度」が導入され、より多くの集落が取り組みに参加した。単なる過疎対策ではなく、地域の自然資源を活かしたブランド戦略が推進された。
山菜や特産品を単なる地元消費品ではなく、付加価値の高い商品として全国に発信し、地域経済を活性化させる狙いがある。定住支援と産業振興を両輪としながら、水源を未来に繋ぐこの条例は、他の地方自治体ではあまり見られない先駆的な試みといえた。
### 第3期(2017年~2026年):水源の里条例の長期化
2017年には条例が改正され、10年間の時限条例として第3期が施行された。この期間では、複数の水源の里集落や外部団体との連携推進、定住促進に向けた取り組みが強化され、さらなる振興が目指された。
### 現在(2025年3月時点):条例の影響と継続
最新の情報によれば、2024年度(令和6年度)には新たに1集落が指定され、合計21の集落が「水源の里」として指定されている。これらの集落では、地域資源を活用した特産品の開発や都市住民との交流イベントの開催など、多様な取り組みが展開されている。
例えば、古屋集落では栃の実を使ったとち餅や焼酎「栃神」の製造・販売が行われ、都市部からのボランティアと協力しながら地域活性化に努めている。
このように、綾部市の「水源の里条例」は、地域の実情に合わせて柔軟に対応しながら、集落の再生と水源地域の保全に寄与している。
### 関連情報
- **制定年月日**:2006年(平成18年)12月
- **対象集落**:市茅野、大唐内、栃、古屋、市志(施行当初)→ 2012年以降56集落に拡大 → 2024年時点で21集落が指定
- **目的**:過疎対策と水源保全の両立、定住促進、特産品開発
- **具体的な取り組み**:
- 山菜や地域資源のブランド化
- 定住支援と都市との交流事業
- 森林の管理による水資源の保全
- **成功事例**:
- **古屋集落**:とち餅・焼酎「栃神」の開発
- **綾部市東部集落**:持続可能な農業と観光交流の促進
- **今後の展望**:条例の延長や、新たな都市・地方連携モデルの開発が検討されている。
過疎に苦しむ水源の村々が、「人のいない風景」へと変わってしまう前に。この条例が、清流のように地域に潤いをもたらし、新たな人の流れを生み出すきっかけとなることが期待される。
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