1. 人口増加と食糧供給の状況
- 2000年の予測では、世界の人口増加率は2015年までに1.2%、2030年には0.8%に減少し、食糧供給は1.6%の成長率で上回るとされていました。特に、インドや中国、ブラジルといった新興経済国での農業技術向上による食糧生産の増加が期待されていました。
- 2020年代の現状では、実際に人口増加率は1%にまで減少しましたが、サハラ以南のアフリカや南アジア(特にインド、バングラデシュなど)では依然として急速な人口増加が続き、食糧供給への圧力が強まっています。特に、サハラ以南アフリカでは、食料安全保障が深刻な課題となっており、エチオピアやナイジェリアなどでの飢餓問題が顕在化しています。一方、世界の食糧供給は1.6%の成長率を維持しているものの、これら地域での食糧不足が依然として解決されていません。
2. 技術進展の影響
- 2000年の予測では、灌漑技術や遺伝子組み換え技術を駆使した農業の効率化が特に開発途上国での食糧供給を大きく向上させると予測されていました。インドやパキスタンでは灌漑プロジェクトが進展し、中国では遺伝子組み換えコメが実用化される見込みでした。
- 2020年代の現状では、バイオテクノロジーや遺伝子工学がアメリカやブラジルなどで農業の生産性を大きく向上させています。たとえば、ブラジルではバイエル(モンサントを買収)やシンジェンタなどの企業が主導する遺伝子組み換え作物が広く普及し、2023年にはトウモロコシや大豆の生産量がそれぞれ1.8倍、1.5倍に増加しました。精密農業技術も普及し、農業生産は高効率化しています。しかし、アフリカではこれら技術が十分に導入されておらず、生産性の向上には限界があるのが現状です。
3. 気候変動の影響
- 2000年の予測では、気候変動の影響は明確に考慮されていませんでしたが、技術進展が食糧供給の問題を解決するという楽観的な見方がされていました。
- 2020年代の現状では、気候変動が農業に深刻な影響を与えています。例えば、2022年にアメリカ中西部(アイオワ州、ネブラスカ州など)で発生した干ばつにより、トウモロコシと小麦の収穫量が前年と比較して15%減少しました。また、南アジア(バングラデシュ、インドネシア)では海面上昇と塩害が米の生産に悪影響を与えており、沿岸部での農業が厳しい状況に直面しています。これにより、気候変動対策としての持続可能な農業や新技術の導入が急務となっています。
4. 企業の役割
- 2000年の予測では、特定の企業の名前や役割については言及されていませんが、技術の進展による食糧供給の増加が期待されていました。
- 2020年代の現状では、アメリカのバイエル(モンサントを買収)、スイスのシンジェンタ、そしてアメリカのカーギルなどの多国籍企業が、バイオテクノロジーや精密農業を駆使して農業生産の効率化を進めています。特に、バイエルの遺伝子組み換え作物は世界中で広く採用され、食糧生産の飛躍的な向上に貢献していますが、気候変動の影響に完全に対応するには限界があり、持続可能な農業への移行が求められています。さらに、日本の農業機械メーカークボタも自動化農業機械を開発し、アジア地域での農業効率化に貢献しています。
総括
2000年時点の予測では、技術革新が食糧供給を増加させるという楽観的な見通しがありましたが、2020年代の現状では技術進展の恩恵を受けた地域と、気候変動による影響を強く受ける地域の格差が浮き彫りになっています。特に、サハラ以南のアフリカや南アジアでの食糧危機に対処するためには、技術進展に加えて、気候変動への適応策が不可欠です。各国政府や企業が協力し、持続可能な農業技術を導入し、気候変動に対応した食糧安全保障の強化が必要です。
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