中国におけるグリーンGDP - 2020年代の現状
2020年代における中国の環境汚染による経済損失は依然として大きく、特に大気汚染と水質汚染が深刻な問題となっています。2021年のデータによると、中国の環境汚染による経済損失は年間で約2.5兆元(約39兆円)に達し、これは中国のGDPの約2.5%を占める規模です。この損失には、健康被害や生態系の破壊、農業生産への影響が含まれています。
大気汚染
北京市や天津市、河北省を含む中国北部の主要都市では、PM2.5濃度が依然として高いままです。2020年、北京市の年間平均PM2.5濃度は35μg/m³で、世界保健機関(WHO)の基準値である5μg/m³を大きく上回っています。また、全国の平均大気汚染による健康被害による損失は、約1.4兆元(約22兆円)に達しています。これには、呼吸器疾患の治療費や労働損失が含まれています。
水質汚染
中国全土での水質汚染も深刻で、特に長江流域と黄河流域が影響を受けています。長江流域では、工業廃水や都市排水によって2020年に2.1億トンの廃水が河川に排出され、その影響により富栄養化や水生生物の減少が進行しています。全国の水質汚染による経済損失は約7,000億元(約11兆円)に達し、漁業や農業、飲料水の確保に影響を与えています。
土壌汚染
土壌汚染も大きな課題で、特に河南省、湖南省、広西チワン族自治区では、重金属による汚染が深刻です。2021年の調査では、中国の耕作地の約16.1%が何らかの形で重金属汚染されており、主にカドミウム、鉛、砒素が問題視されています。土壌汚染による農業生産への損失は、約2,000億元(約3兆円)と推定されており、食糧の安全保障にも大きな影響を与えています。
企業の対応
中国石油化工集団(Sinopec)は、2023年に年間100万トンの水素製造プロジェクトを稼働させ、二酸化炭素の排出削減を目指しています。また、中国石油天然気集団(CNPC)は、天然ガス供給の拡大と再生可能エネルギーへの投資を進めており、今後5年間で10兆元(約150兆円)の投資を計画しています。これらの対策により、CO2排出量のピークアウトを2025年までに達成することを目指しています。
技術と政府の取り組み
中国は、AIやビッグデータ技術を活用して、リアルタイムでの環境モニタリングを強化しています。国家衛星気象センターが管理する「風雲」シリーズの環境モニタリング衛星を活用し、大気汚染物質や水質汚染を監視することで、より正確なグリーンGDPの算出が可能となっています。また、地方政府間の規制のばらつきが問題視されていますが、今後は一貫した規制強化と罰則の導入が進められ、持続可能な経済成長と環境保護を両立させることが目標です。
【146-2006-09-20】
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