医療廃棄物問題 - 1998年2月
1996年に日本全国で発生した医療廃棄物は約36万トンに達し、その処理市場は依然として未熟である。特に感染性廃棄物として扱うべき注射針やガーゼなどの医療廃棄物が、不適正処理や不法投棄の対象となっており、適正な処理を行っている業者は全体の約2割に過ぎない。東京都内だけで、22社の処理業者が存在しているが、うち適正な処理を実施しているのは10社程度とされる。
処理相場は、適正に処理する場合、1キログラムあたり300〜350円と高額であるが、現状では70〜80円という低価格で取引されており、適正な処理が行われることは稀だ。不法投棄が頻発する背景には、病院側の廃棄物処理費用が診療報酬に含まれていないため、コスト削減が優先される現実がある。
具体的な問題として、呉羽環境株式会社では1日あたり185トンの医療廃棄物を24時間連続で処理する体制を整えているが、小型業者の多くは、医療廃棄物収集容器を強制的に開けて処理することが横行している。また、塩化ビニールや水銀を含む廃棄物を含めた焼却には、ダイオキシンや有害ガス抑制装置が必要であるが、多くの業者はこうした設備を備えていない。
東京都では、衛生局と清掃局を中心とした「医療廃棄物適正処理連絡協議会」が設立され、呉羽環境のモデル施設見学や適正処理契約書の導入説明会を開催しているが、根本的な解決には至っていない。
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