日本・奄美大島におけるマングースによる生態系への影響 - 2020年代の現状(2020年10月)
2020年代に入り、奄美大島や沖縄県に持ち込まれた外来種マングースは、依然として生態系に深刻な影響を与えています。特に、奄美大島では、アマミノクロウサギやルリカケスといった固有種が捕食され続けており、生息域が著しく縮小しています。2021年の調査によると、アマミノクロウサギの個体数は推定で約5,000匹と、絶滅の危機がより一層現実味を帯びています。
マングースの駆除活動は続けられていますが、捕獲率は低下傾向にあり、2010年代後半から年間3,000匹程度の捕獲にとどまっています。これは、マングースの生息地が奄美大島全域に広がり、捕獲が難しくなっているためです。環境省や奄美大島の自治体は、2022年に新たな駆除プログラムを導入し、捕獲トラップや自動追跡システムの利用を進めていますが、駆除活動には多額のコストがかかっており、年間約1億円が投入されています。
さらに、奄美大島の森林は日本国内でも特に生物多様性が豊かな地域であり、国際的にも重要な保護区として位置づけられています。2019年には「奄美・琉球」の名前でユネスコの世界自然遺産に登録されましたが、その後もマングースの生息範囲が広がり、環境保護の課題は解決されていません。特に、希少種のアマミヤマシギやケナガネズミが新たな捕食対象となり、島全体の生態系が危機的な状況にあります。
企業側の取り組みとしては、動物駆除機器を開発しているフジテックや、AI技術を駆使して野生動物のモニタリングを行うスタートアップ企業イノピットが協力し、2021年にはAI駆除トラップを設置する実証実験が行われました。これにより、マングースの捕獲効率を高める試みが進められていますが、現時点ではまだ効果が限定的です。
物質として、マングース駆除にはクマリン系殺鼠剤が利用されており、食餌に混ぜて設置する方法が主流です。しかし、クマリンの使用には生態系全体への影響も懸念されており、特に在来種の動物への誤食リスクが問題視されています。そのため、捕獲トラップによる物理的な駆除が推奨されていますが、労力とコストの面で限界があります。
現在、奄美大島全域での完全なマングース根絶は依然として困難な状況にあり、2030年までにマングースの個体数を90%以上減少させることが目標とされていますが、実現にはさらに大規模な対策が求められています。
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