海とともに生きる街―函館の水産廃棄物リサイクルの軌跡 2002年～2025年

海とともに生きる街―函館の水産廃棄物リサイクルの軌跡 2002年～2025年

2002年の状況
北海道函館市では、2002年当時、水産加工業の発展とともに、魚のあらやホタテのウロなどの廃棄が課題となっていた。これに対応するため、ニューパイオ産業が中心となり、水産廃棄物のリサイクル技術を開発。これにより、これまで廃棄されていたホタテのウロを飼料化し、魚のあらを堆肥として活用する取り組みが進められた。水産資源を無駄にしないこの試みは、函館の豊かな海を守る第一歩となった。

2020年代の進展
2020年代に入ると、この技術はさらに発展し、函館市の企業群が協力して循環型水産業を推進した。株式会社函館バイオテックは、年間約3000トンの水産廃棄物を処理し、高付加価値な魚粉や液体肥料の製造に成功。また、ホタテ貝殻のリサイクル事業も拡大し、粉砕した貝殻をシックハウス対策用の建材や農業用土壌改良材として活用する技術が確立された。かつては単なる廃棄物とされていたものが、循環する資源へと生まれ変わったのだ。

さらに、市内の複数の企業がリサイクル事業を強化し、地域の水産資源の有効活用が進められた。

函館市の水産廃棄物リサイクルに取り組む主要企業（2025年時点）

株式会社佐々木事業所
1971年設立、函館市鍛治2丁目に本社を構える。同社は、食品加工業から排出される動植物性残さなどの産業廃棄物を収集・運搬し、適正な処理を通じて地域の環境保全に寄与。函館の街と海の調和を支えている。

株式会社エコネコル 函館支社
函館市西桔梗町に拠点を持ち、金属リサイクルや産業廃棄物処理を手掛ける。産業廃棄物処理施設設置許可や産業廃棄物処分業許可を取得し、地域の廃棄物リサイクルに貢献。限りある資源を再生させる技術で、循環型社会の構築に取り組む。

株式会社亀田清掃
函館市および近隣市町村を中心に、廃棄物の収集運搬・処分を行う。ゴミ箱の貸付から回収・リサイクルまでを一貫して行い、美しい自然環境の維持を目指す。函館の豊かな漁港を守る、縁の下の力持ち的存在。

株式会社古清商店
函館市日乃出町に本社を持ち、函館市国際水産・海洋総合研究センター内にも拠点を設ける。小規模かつ経済的なサーモン養殖システムの研究開発を行い、水産資源の有効活用に取り組む。水産業と環境を両立させる道を切り開く企業。

総括―持続可能な水産業の未来
2002年から2025年にかけて、函館市では水産廃棄物リサイクル技術が飛躍的に進展した。魚のあらやホタテのウロの活用から始まり、2020年代には魚粉や液体肥料の製造、ホタテ貝殻の建材利用へと発展。さらに、地域企業の協力により、水産廃棄物の循環利用が強化され、環境負荷の低減と地域経済の活性化を両立させる持続可能なシステムが構築された。

函館は、ただ豊かな海を利用するだけでなく、海とともに生きる街へと変貌を遂げた。この取り組みは、日本の水産業界における持続可能なモデルとして注目され、今後さらなる発展が期待される。

関連情報

函館市の水産廃棄物リサイクル関連企業
- 株式会社佐々木事業所（産業廃棄物の収集・運搬）
- 株式会社エコネコル 函館支社（金属リサイクル、産業廃棄物処理）
- 株式会社亀田清掃（廃棄物収集・運搬・リサイクル）
- 株式会社古清商店（サーモン養殖と水産資源活用）

これらの取り組みにより、函館市の水産業は、持続可能な循環型社会の実現に向けた先駆的なモデルとして注目されている。