Thursday, September 12, 2024

有機スズの海洋生物への影響 - 1998年10月

有機スズの海洋生物への影響 - 1998年10月

有機スズ化合物、特にトリブチルスズ(TBT)は、船舶の防汚塗料として広く使用されてきましたが、海洋生物に深刻な影響を及ぼしています。特に、北海や地中海といった主要な航路における海洋汚染が顕著であり、これらの地域での海洋哺乳類、特にイルカやアザラシが大きな影響を受けています。TBTは水中で数十年以上残留し、食物連鎖を通じて生物濃縮が進行するため、最上位の捕食者である海洋哺乳類に高濃度で蓄積されます。

研究によると、TBTの濃度がわずか10ナノグラム/リットルの低濃度であっても、イルカの免疫機能が著しく低下し、感染症に対する耐性が減少することが確認されています。特に、地中海の沿岸地域では、TBT汚染が原因でアザラシの個体数が大幅に減少しているというデータが報告されています。

また、日本国内でも東京湾や瀬戸内海でのTBT汚染が問題となっており、漁業への影響も深刻です。国内の有機スズ化合物の製造には大手化学企業である住友化学や三井化学が関与しており、これらの企業が規制の強化に直面しています。1990年代後半、国際海事機関(IMO)はTBTの使用を段階的に廃止することを提案し、2003年には完全禁止措置が取られましたが、その影響は今も続いており、環境への影響が続いている状況です。

この研究で特に注目すべき点は、低濃度でも海洋哺乳類に致命的な影響を与えるTBTの性質が明確に示されたことです。

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