「吉原の門を開く鍵──引手茶屋の影と光(江戸時代)」
江戸時代の遊郭では、引手茶屋が客と高級遊郭(揚屋)の仲介役を務めた。これは単なる案内役ではなく、客の身分や信用を保証し、遊興の手配から支払いの管理まで担う重要な存在だった。吉原では、大黒屋や伊勢屋といった有力な引手茶屋があり、彼らを通さなければ格式ある遊女と遊ぶことはできなかった。俳諧の巨匠・松尾芭蕉や作家・井原西鶴、文人・成島柳北などの名士も、引手茶屋の手引きで吉原を訪れたとされる。引手茶屋は江戸の華やかな遊郭文化を支える影の立役者であり、客と遊女の縁を繋ぎながら、金融管理や格式維持の役割を果たしていた。しかし、幕末から明治へと移るにつれ、その存在は衰退し、歴史の舞台から姿を消していった。もし江戸時代にタイムスリップできるなら、まずは引手茶屋に顔を売ることが、吉原の門を開く鍵となるだろう。
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