ニューヨークのセントラル・パークでは、年越しを祝う若者たちが集まり、冷たい空気の中に混じって、大麻の煙がゆらゆらと漂っていた。語り手はどうしてもその煙の中に入りたくなり、若者たちの輪の中へと足を踏み入れる。彼らは語り手の気持ちを察し、「楽しめよ」と言って、吸いかけのパット(マリファナ)を手渡した。隣にいた女の子がウインクし、フレンドリーな空気を醸し出す。その場の雰囲気に流されながら、初めての一服を試してみた。しかし、期待していたほどの変化は訪れなかった。「バットなんてどーってことないな。どうしてこんなものを吸うのかな。酒のほうがいいのに。」そう思いながらも、パットをくれた若者に微笑みを返した。
ある日、語り手はビビアンという女性に誘われ、彼女たちのアパートへと向かった。車に乗ると、ロック・ミュージックのボリュームが最大限に上げられ、車内はたちまちパットの煙で満たされた。ブルックリンのダウンタウンにあるアパートに着くと、ビビアンは「私たちはパットを売って儲けているのよ」と言った。スケールが違うな、と語り手は思った。彼女たちの生活は大胆で、アメリカの男たちが弱くなったと言われるのも、なんとなく理解できる気がした。アパートの中には、大麻の独特な香りが染みついており、語り手は彼女たちの生き方に圧倒された。
ビビアンは植木鉢の中で育てている一本のパットを見せてくれた。それは「若者のシンボル」のように感じられた。この日、語り手はどうしてもパットの酔いを強く感じたくなり、一人で四本も吸ってしまった。そして四本目を吸い終えた瞬間、強烈な感覚が押し寄せた。周囲の友人たちは「オー・ストーン」と笑っていた。まさに、体が石のように重くなり、すべてがスローになってしまったのだ。酒の酔いとは明らかに違う。「パットの酔いを"酔う"とは言いたくない。なぜなら、それはまったく異なる種類のものだから。」目を閉じると、体が雲の上に乗るような感覚に包まれ、完全にリラックスし、何も考えられなくなった。エレキギターの音が頭に響き、脳みそが吹っ飛びそうになる。気づけば、音楽の波に飲み込まれていた。
その後、語り手たちはディズニーのアニメーション映画を観にマンハッタンへ向かった。車の中ではパットを吸い、さらに「マスピリン」という白い錠剤を飲み込んだ。映画が始まる頃には、頭がぐらぐらと揺れ始め、強烈な酔いに襲われた。真っ赤な花びらが散ると、自分もその花びらの一枚になり、ゆっくりと下へ落ちていく。映画の世界に完全に入り込み、現実と幻覚の境界が曖昧になっていく。友人のデニスは一錠半を飲んでしまい、もがき苦しんでいた。その間も、語り手は音楽と映像に完全に溶け込んでいった。
ある夜、ビビアンが「面白いパーティーがある」と語り手を誘った。会場にはすでに十二人ほどの仲間が集まり、異様な雰囲気が漂っていた。彼らは大麻ではなく、LSDを使用していた。語り手も、一度は試してみたいという衝動に駆られた。うす紙に一滴しみ込ませたLSDを舌に乗せ、少しずつ舐めていく。やがて、テレビの画面の色が異様に鮮やかに感じられ、まるで映像が飛び出してくるように見えた。白人や黒人の友人の顔がユラユラと歪み、次第に信じられなくなっていく。どうにかトイレへ向かおうとするが、体が思うように動かず、イスから立ち上がるのに苦労する。やっとのことでトイレへ入るが、気づくとシャワーを浴びていた。
部屋へ戻ると、裸の男女があちこちで絡み合っていた。そして目の前には、一匹の赤い犬が座っていた。いや、座っていたのではなく、そこでウンコをしていたのだ。それを見た瞬間、語り手は笑いが止まらなくなった。周囲の仲間も次々と笑い出し、部屋中が笑いに包まれた。そしてついに、一人がそのウンコを踏んでしまった。その瞬間、語り手は「もう死ぬほど笑ってしまった」と感じるほど、笑い転げてしまった。
その後、語り手はパットを毎日嗜むようになった。「パットがなければ、この世はバットしない。」音楽を聴くときや、一人で眠るときに吸うのが特に心地よかった。友人のアリーンは、眼科医の助手をしながら勤務中にもパットを吸っていた。そんな医者に診てもらう患者はたまったものではない、と語り手は思いながらも、彼女の生き方の大胆さに感心するのだった。
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