2018年11月28日水曜日

人の遺伝子を傷つける環境ホルモン 1998.11.15


本来のホルモンは内分泌器官で作られ、必要に応じて血液によって各細胞に送られ、 生命維持に関するさまざまな遺伝情報を伝える役割を持つが、 外因性内分泌錯乱化学物質、 通称「環境ホルモン」 は、人聞や動物の生体内に取り込まれると成長や生殖機能を調整するホルモンに近い作用を果たすことで正常な内分泌系を撹乱し、発育障害や生殖機能異常などを誘発する。 最近ではとくに生殖機能に影響を与ぇるエストロゲン (雄ホルモン) の働きと類似する物質を指すことが多いが、 抗アンドロゲン(男性ホルモン)様作用、神経系の発達を妨げる抗甲状腺ホルモン様作用を持つ物質も発見され ており、人の精子数の減少、魚のメス化、生殖不能となったワニ、奇形ザル、過剰肢のカエルの大量発生などの原因とされている。 これまでの化学物質対策が、致死作用、初ガン性など直接的な毒性を持つ物賃のみに焦点を当ててきたのに対し、 環境ホルモンの恐ろしい点は、その影響が本人よりもむしろ次世代に持ち越されることにある。成人の場合、外部から侵入してきた環境ホルモンに対し、受け入れを遮断する防御機能が働くため大きな影響はないとされる。しかし、精子数の減少や、 生殖器の異常、 乳ガン、精巣ガンなどの症例は胎児期のホルモンバランスが関係する。体内の各器官が形成される妊娠初期の 3 カ月間に、 母体を通じて環境ホルモンの影響を受けると胎児にはそれを防ぐ手だてがな い。 その影響は成長するまで分からないため、 科学的な因果関係を証明することが難しいのだ。 環境庁は97年7月に環境ホルモン作用の疑いのある67物質をリストアップしたが、 動物実験などから環境ホルモン作用を持っていることが確認されているのは20種類余り 。それぞれの物質の作用の強さや、 どのくらい摂取 すると人体に影響するのかなどについてはほとんど解明されていない。その他の物質については推測のレべルだ。 環境保護局 〈EPA) では今夏から生産量の多い1万5000化学物質の分析を開始し、 最終的には6万種の割り出しを行なうとしているが、 すべての分析が終わるのは2003年以降だという。世界的にも環境ホルモンの研究は始まったばかりで、 各国のデータ比較もままならない。